名古屋工業大学 白井研究室先進セラミックス研究センター/生命・応用化学類 環境セラミックス分野

RESEARCH研究内容

白井研究室は「人々の暮らしに貢献するセラミックス」をつくっています。粉体やセラミックスの表面・界面で起こる化学反応に注目し、マイクロ波やメカノケミカル反応がつくる特異な反応場を使って、低温・短時間・省エネルギーで機能性材料を合成するプロセスを開発しています。対象は環境浄化触媒、発光材料、エネルギー材料、建設材料まで幅広く、「お茶から宇宙まで」をキーワードに研究を展開しています。

環境浄化材料環境低負荷プロセス次世代材料プロセスグリーンエネルギー材料

キーワードセラミックス工学/材料表面化学/セラミックスプロセッシング/メカノケミストリー/マイクロ波化学

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研究テーマ

マイクロ波による粒子表面の構造制御のイメージ
次世代材料プロセス環境浄化材料

マイクロ波特異反応場による機能材料の高速合成

マイクロ波は物質を内部から選択的かつ急速に加熱でき、通常の加熱では得られない「熱的非平衡」な反応場をつくり出します。当研究室では、2.45 GHzのシングルモードマイクロ波照射装置やマイクロ波プラズマを用いて、酸化チタン粒子の表面に酸素欠陥やナノカーボン被膜を数分で作り込む手法を開発してきました。これにより、可視光や近赤外光で働く非化学量論型の酸化チタン、酸化タングステン、酸化モリブデン系の光触媒を創製し、水浄化や水分解による水素生成への応用を進めています。液相ポリオール法と組み合わせた白金ナノ粒子の高速合成など、金属ナノ粒子の構造制御にも取り組んでいます。

代表論文:Sci. Rep. 9, 4900 (2019)/Scripta Mater. 177, 157 (2020)/ACS Appl. Nano Mater. 5, 4305 (2022)/ACS Appl. Mater. Interfaces (2024)

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ボールミルの機械的エネルギーによる発光性シリコンナノ粒子の合成のイメージ
環境低負荷プロセス

メカノケミカル反応による表面活性化と固相合成

ボールミルなどで粉体に加える機械的エネルギーは、粉体表面の構造を乱し、室温でも化学反応を進める駆動力になります。このメカノケミカル反応を利用して、水素シルセスキオキサン((HSiO1.5)n)から発光性のシリコンナノ粒子(SiNPs@SiO2)を合成する手法を創成しました。高温での熱処理や有害な試薬を使わずに、粒径によって赤色から青色まで発光色を制御できます。さらに、水素タングステンブロンズやペロブスカイト材料の固相合成、石炭灰や水酸アパタイトの表面活性化など、省エネルギーな材料プロセスへ展開しています。

代表論文:J. Mater. Chem. C 10, 12588 (2022, Front Cover)/RSC Mechanochem. 5, 641 (2025)/Ceram. Int. 50, 20790 (2024)

水酸アパタイト触媒とハニカムフィルターによるVOCの分解のイメージ
環境浄化材料

水酸アパタイトを用いた貴金属フリー環境触媒

揮発性有機化合物(VOC)は光化学オキシダントやPM2.5の原因となる大気汚染物質で、その分解には白金やパラジウムなどの高価な貴金属触媒が使われてきました。当研究室は、骨や歯の主成分である水酸アパタイト(HAp)が、貴金属を担持しなくてもVOCを完全に分解できることを見いだし、その反応機構を世界で初めて明らかにしました。結晶成長の制御による活性面(a面・c面)の露出や、メカノケミカル処理による表面活性化によって、触媒性能を飛躍的に向上させています。多孔体に成形して「母材」と「触媒」を兼ねる環境浄化フィルターや、廃骨から得たHApの活用にも取り組んでいます。

代表論文:Catal. Sci. Technol. 10, 5453 (2020)/Sci. Rep. 11, 7512 (2021)/J. Ceram. Soc. Jpn. 133, 220 (2025)

導電性セラミックスの電池・自動車・電磁波吸収材への応用のイメージ
グリーンエネルギー材料

ゲルキャスティングと還元焼結による導電性セラミックス

本来は絶縁体であるアルミナなどのセラミックスに電気を流す機能を持たせるため、モノマーと架橋剤を含むスラリーを型の中でゲル化させる「ゲルキャスティング」で成形し、その有機成分を還元雰囲気での焼結時にナノカーボンへ変える手法を開発しました。ナノカーボンが粒界に連続して形成されることで、従来の作製法より20倍高い移動度を示す半導電性の複合体が得られます。パルス通電焼結によるグラファイト/アルミナ複合体では、p型とn型の半導体特性の作り分けにも成功しました。高磁場中での成形による結晶配向セラミックスや、多孔質断熱材の作製にも応用しています。

代表論文:J. Eur. Ceram. Soc. 39, 1730 (2019)/J. Adv. Ceram. 11, 523 (2021)/J. Eur. Ceram. Soc. 44, 1864 (2023)

魚の鱗から発光性カーボンナノオニオンをつくりLEDに応用するイメージフライアッシュの表面活性化と化学反応で固めるセメントレスコンクリートのイメージ
環境低負荷プロセス次世代材料プロセス

バイオマス・産業副産物のアップサイクル

魚の鱗などのバイオマスや、石炭火力発電所から出るフライアッシュなどの産業副産物を、付加価値の高い機能材料へ変換します。魚の鱗をマイクロ波で数秒間熱分解するだけで、世界最高の発光効率(量子収率 約40%)を示すカーボンナノオニオンの合成に成功し、フレキシブル発光膜やLEDへの応用を示しました。また、フライアッシュの表面をメカノケミカル処理で活性化し、アルカリ溶液との化学反応で固める「セメントレスコンクリート」技術の確立と、強度発現機構の解明を進めています。このほか、もみ殻灰からのSiC合成、アルミドロスの再資源化、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)から炭素繊維を回収する固体触媒の開発にも取り組んでいます。

代表論文:Green Chem. 24, 3969 (2022, Back Cover)/Ceram. Int. 49, 34327 (2023)/Adv. Powder Technol. 36, 104910 (2025)/Green Chem. (2026)

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マイクロ波で焼き固めた月レゴリスの建材で舗装された月面基地のイメージ
次世代材料プロセス

マイクロ波でつくる宇宙インフラ

アルテミス計画などにより、2040年ごろには月面で1000人規模の有人滞在が想定されています。地球から月へ資材を運ぶコストは1 kgあたり約1億円とされ、月の資源を現地で使う「その場資源利用(ISRU)」技術が欠かせません。当研究室では、月面を覆う玄武岩質の砂「レゴリス」をマイクロ波で加熱し、溶かして焼き固めることで建材をつくる技術を開発しています。真空下でのマイクロ波加熱条件を精密に設計することで、圧縮強度300 N/mm2を超える高強度の緻密体や多孔質体の作製に成功しました。運搬路やロケット離発着場の舗装材、居住施設の防護層への利用をめざし、低重力環境での挙動評価にも挑戦しています。

代表論文:Sci. Rep. 14, 28231 (2024)

釉薬の表面で緑茶カテキンが変化するイメージ
次世代材料プロセス

釉薬の表面化学から考える「未来のお茶碗」

「同じお茶でも、茶器が違うと味わいが違う」。この言い伝えを科学的に確かめるため、織部・伊羅保・海鼠・透明釉などの陶磁器釉薬の表面で、緑茶カテキンがどのように変化するかを調べました。その結果、釉薬に含まれる銅・鉄・コバルトなどの遷移金属酸化物が触媒として働き、カテキンを選択的に分解・重合させることを世界で初めて見いだしました。湯呑の中で、緑茶が紅茶やウーロン茶に近い成分へ変化することもあります。現在は、釉薬の組成と構造を制御して香り成分への影響を調べるなど、日本の伝統的な陶磁器技術と茶文化の新しい展開をめざしています。

代表論文:Sci. Rep. 13, 10507 (2023)

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アルミナ粒子表面の水和と粒子どうしの結合のイメージ
次世代材料プロセス環境低負荷プロセス

セラミックス粉体の表面評価と水和挙動

セラミックス粉体の性質は、粒子表面のわずか数ナノメートルの層の状態によって大きく左右されます。当研究室の原点は、この粉体表面を詳しく「見る」研究です。昇温脱離質量分析(TPD-MS)や拡散反射赤外分光(DRIFT)などを用いて、市販の高純度αアルミナ粉末の表面に存在する水和物・吸着物層や、四配位アルミニウムイオンなどの配位不飽和サイトを評価し、粉末の製造プロセスによって表面の水和のしやすさが大きく異なることを明らかにしました。また、窒化アルミニウム(AlN)粉末が湿った空気中で加水分解し劣化していく機構と反応速度論を解明しました。

さらに、粒子表面の水和反応を積極的に利用し、マイクロ波で水和反応を促進して粒子どうしを結合させる、バインダーを使わないアルミナの成形法を開発しました。遊星ボールミルによる機械的な表面活性化と組み合わせた非焼成セラミックスへの展開や、ボールミル処理が粉体の水和挙動に与える影響の解明など、この表面評価の知見は、現在のメカノケミカル・マイクロ波プロセスや、5配位アルミニウムに富むアモルファスアルミナ触媒の研究の基盤となっています。

代表論文:Sci. Technol. Adv. Mater. 6, 123 (2005)/J. Ceram. Soc. Jpn. 114, 286 (2006)/J. Ceram. Soc. Jpn. 114, 415 (2006)/J. Am. Ceram. Soc. 89, 937 (2006)/J. Am. Ceram. Soc. 90, 4026 (2007)/J. Ceram. Soc. Jpn. 120, 438 (2012)/Ceram. Int. 50, 20790 (2024)

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